結膜炎

結膜が炎症を起こして白目が充血し赤くなり、目やにが出る病気です。結膜は、まぶたの裏側から折り返して角膜のまわりまでを覆っている薄い膜で、目に入ってきた異物や病原体が目の中に侵入するのを防ぐはたらきがあります。その原因には細菌、ウイルス、クラミジアなどによる感染や、花粉やハウスダストによるアレルギーがあげられます。細菌性結膜炎では黄色い粘り気のある「めやに」がでることが多く、アレルギーでは白っぽい糸をひくような「めやに」がでます。

アレルギー性結膜炎

目のアレルギーには、花粉の飛ぶ季節に限定してかゆみや充血がおこる季節性アレルギー性結膜炎や、ハウスダスト(ダニ、カビ、動物の毛やフケなど)などにより1年中症状が続く通年性アレルギー性結膜炎があります。また、重症になると、まぶたの裏の粘膜がでこぼこになったり黒目にも傷ができたりと、子どもに多くみられる春季カタル、アトピー性角結膜炎、ソフトコンタクトレンズを使っている人にみられる巨大乳頭性結膜炎などがあります。治療には抗アレルギー点眼薬を用いますが、それだけでは症状が治まらないときは、ステロイド点眼薬等を併用する場合があります。花粉を体内に入れないことが最も大切ですが、花粉が飛びはじめる2~3週間前に点眼にて対処することで症状を軽減できる場合もありますので、毎年お悩みの方は一度ご相談ください。

季節性アレルギー性結膜炎:外出の際はマスクやメガネを使用し、可能なかぎり花粉の接触を避けます。窓を開けないようにし、洗濯物や布団を外干しした際は、花粉をよく落としてから家の中に取り込むようにしましょう。
通年性アレルギー性結膜炎:部屋の掃除をこまめにし、常に清潔に保ちましょう。できるだけ絨毯の使用を避け、埃がたまらないよう気をつけましょう。

*眼科で点眼を処方されていたり、検査用点眼薬を使用する場合、点眼薬に対するアレルギーが出る場合があります。新しい点眼薬を使った後、充血・眼脂・違和感が出た場合は、早めにご相談下さい。

流行性角結膜炎

流行性角結膜炎とは、いわゆる「はやり目」と言われ、アデノウイルスが原因で起こる眼のウイルス感染症です。感染力がとても強いため流行しやすく、感染すると7~14日後に発病します。急に白目が真っ赤になり大量の「めやに」がでます。涙目になったり、まぶたがはれることもあり、細菌など他の原因による結膜炎にくらべ症状が重いです。子どもや症状が強い人の場合は、まぶたの裏の結膜に偽膜という白い膜ができ、これが眼球の結膜に癒着をおこすことがあります。また炎症が強いと黒目の表面がすりむける角膜びらんを伴い、目がゴロゴロしたり、とても痛くなることがあり、治癒後に角膜の透明度が低下し、混濁が残ることもあります。ときに結膜炎が出血性となり、出血性結膜炎(エンテロウイルス70型, コクサッキーウイルスA群24型 変異株による)や咽頭結膜熱との鑑別を要することや、ヘルペスウイルスや、クラミジアによる眼疾患との鑑別が必要です。

流行性角結膜炎の検査方法&診断

眼科では簡易的に診断するアデノウイルス診断キットも用意しております。結膜に麻酔の点眼をしてから目やにと一部の結膜上皮細胞を採取します。それをキットに流すと、アデノウイルスが結膜に存在するかどうかがわかります。この方法で検出できるのは感染例の約70%と低く、陰性と出ても陽性の場合があるので、検査結果が陰性でも安心することはできません。また、眼の充血や目やにの状態に加えて、家族や周りの人に発病している人がいないか、リンパ節が腫れていないか等の診察によって総合的に診断します。

治療時の注意点

手をこまめに洗いましょう。
顔を拭くタオルを家族と共有しないようにしましょう。
お風呂は最後に入るか、シャワーなどですませましょう。
お子様の場合は、眼科医の判断に従って登校を控えないといけません(登園・登校を再開する場合は医師の診断書を求められる場合があります)。感染の拡大予防に努めましょう。

アデノウイルスに対する有効な薬剤は現在はありませんが、不快な症状を和らげる目的で、炎症を鎮める効果のある非ステロイド性抗炎症点眼薬やステロイド点眼薬が使用されます。
なお最近、アデノウィルスにも効果のあるヨード系の点眼が発売されましたが、処方薬ではないため、薬局で購入して頂く必要があります。使用法に注意が必要ですので、ご希望の患者さんには説明させて頂きます。
また、抵抗力が落ちている結膜に細菌が感染しないように、予防的に抗菌点眼薬が使用される場合もあります。症状は、ウイルスに対する体の抵抗力がついてくるにつれてしだいに治まり、約2週間~1ヵ月ほどで完治します。

後遺症と合併症への注意

アデノウイルスを罹患した場合は、発症して1週間後くらいに症状のピークを迎えます。
すなわち、点眼を使っていても症状がすぐに収まるわけではありません。
また、片目を発症した1~2週間程度後に、もう片方の目にも発症するケースが多いことも特徴的です。結膜炎の症状がおさまってきた頃に、黒目(角膜)の表面に小さな点状の濁りが出てくることがあります。このときに治療をやめると、角膜が濁って視力が落ちることがありますので、治ったかなと思っても、眼科医がいいというまで点眼などの治療を続けるようにしましょう。
学校保健法の第三種伝染病に指定されていますので、学童の場合は、医師の許可が出るまでは出席停止することになります。成人の場合は、伝染を防ぐために人と接触する機会が多い接客業や医療施設、学校等では、それぞれの内規で出勤停止が義務づけられている場合があります。他人への感染を防ぐためにも、原則として自宅療養が望ましいでしょう。

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  • 結膜下出血画像

眼が赤くなる疾患で、結膜炎とよく間違われるのが、結膜下出血です。これは、結膜の小さな血管が破れて出血したもので、白目部分が絵の具を塗ったようにべったりと赤く染まります。多少、目がごろごろしますが、強い痛みなどはありません。原因は、若い方では、打撲などの物理的原因が主で、中年以降の方では、特に何もしないのに知らないうちに出血しているということが多く見られます。これは、年齢の変化で結膜と強膜(白目)の結合が緩むことで眼が動く時に結膜付近の血管が引っ張られて切れてしまうからだといわれています。ほとんどの場合は、特に治療しなくても1~2週間ほどで自然に吸収されることが多いのですが、強いものでは2~3カ月ぐらいかかります。注意が必要なのは、脳梗塞後や狭心症、心筋梗塞、心房細動、透析中などで、血液をさらさらにする薬を使われている場合で、出血が大量に出て、結膜がドーナツ状に膨れてしまい、場合によっては瞼が閉じにくくなることがあります。そのままにしていると角膜や結膜が乾燥して非常に痛くなりますので、眼軟膏などで保護する必要がでてきます。また、急性結膜炎で出血することもありますので、この場合は結膜炎として治療を行います。